名が売れるにつれ、周囲の目は厳しくなっていった。
オレがなにをしても、勇者だから、勇者のくせにと噂が立つ。
優しくて当たり前。
人の役に立って当たり前。
戦闘で負けるなんてありえない。
オレだって負ける気なんかない。
日々の鍛錬はもう癖になっている。
それでも、声が、期待が、失望が、腕に、肩に、背中にと、纏わりつき圧し掛かり、オレを潰そうとしているようにすら感じる。
『家』にいた時も、『今』も、なぜこうなってしまうんだろうか。
『家』にいた時は、ずっと光の剣があるからだと思っていた。
光の剣があるから、家族ですら争うことになるんだと。
光の剣があるから、オレが蔑まれ、憎まれ、疎まれるのだと。
じゃあ、『今』は・・・・・・
『家』を飛び出したときは、光の剣を捨てれば望む平和が訪れると思っていた。
『今』は・・・・・・どうすればいいのか、オレにはわからない。
わからないままに、今日も剣を振るう。
何を守っているのか、誰を守っているのか。
何を守りたいのか、誰を守りたいのか。
「人生は試練の連続だよ」と、ばーちゃんが言っていたのを思い出す。
『人』に囲まれた孤独の中で、いつかこの人生が終わるまで。
剣を振るい腕を磨き、いつか、終わるまで―――
[1回]
PR